エビデンス~信頼できる情報を見極める。その2

エビデンス~信頼できる情報を見極める。その2

前回は対象人数が多ければ多いほど結果の信憑性が上がるquantitative research の話をした。しかし、看護の質を数値で表すのはなかなか難しい。ナースは、やさしく声をかけてもらったとか、注射が痛かったとか、痛いところをさすってもらったとか、抽象的な良し悪しの評価を受けることが多い。さらに、看護はQuality of life (QOL) つまり生活の質、といったことに重点を置く領域も少なくない。では、いったい抽象的な看護のリサーチはどのように行われているのか。

質を重要視した research

Qualitative research というのは、数値で表せないデーターを使ったリサーチだ。Quantitative research では 研究の被験者(participants) の人数、つまりはサンプルのサイズが大きければ多いほど信頼できるデーターとされている。(厳密に言えばサンプルサイズの大きさだけではないのだが)Qualitative research でのデーターの集め方としては、インタビュー、観察、グループトークなどがある。Participants が話している内容をまとめて、分析(analyse)する。分析の仕方もいろいろあり、これはリサーチの目的や participants の人数にもよる。

ちなみに、qualitative research の種類とか、リサーチのやり方(study design)は無数だと思う。それぞれのリサーチによって、何を知りたいのか(research question ) が異なり、それぞれが、置かれた状況下で可能な限り知りたい内容を研究していくのだから、皆が同じやり方のわけがない。

データーの分析 - Data analysis

一般的によく知られているのは、thematic analysis とか grounded theory method とか。Thematic というのは、テーマ(theme)つまり傾向を見つけるというもの。

例えばxxx病棟の看護を向上させるため、患者の意見を聞こうと言うことになって、入院患者10人に看護師についてどう思うか、とインタビューした場合。インタビューの仕方によってもちろん結果は大きく変わる。ここで気をつけないといけないのは、closed question (yes かno で答えられる質問) にしてしまうと結果のデータは quantitative になってしまう。質問1の回答は yes 7個、みたいな。Qualitative のデーターを集めるなら、open question、つまりWhy, What, Howなどで始まる文章で質問しなければならない。集めた回答は、回答中の話の流れをそのまま受け取るのではなく、分解して傾向を見つけていく。これが data analysis だ。例えば、データーAが ”看護師がフレンドリーだと思う” で、データーBが ”夜はよく眠れた” だったとする。”看護師がフレンドリーだから夜よく眠れた”と、患者が答えたわけではなく、分析の段階で看護師がフレンドリーだと感じた患者はよく眠れる傾向にある。というデーターAとデーターBの関係を見つけ出す。(これはあくまで例えで、本当にフレンドリーだけで眠れるわけは無い)そして、10人の回答をまとめていくと、何人かに同じ傾向が見られたとする。繰り返し同じ傾向が見られることを data saturation という。Saturation は飽和と言う意味だ。ここまでくれば、AとBの関係は信頼のおける分析となる。

ここまで書いて言うのもなんだが、qualitative research と言うのは、ものすごく理解しにくく、ナースの間でも嫌われ者の教科だ。Grounded theory method などは、本当に未知の世界だ。しかし実はこの grounded theory methodを使って私は論文を書いた。どこをどう考えても他の方法で現状の改善につながるような法方が見つからなかったからだ。Participants がなかなか見つからなかったからだ。Ground theory method を使って、participant が一人という修士論文を見たことがある。このリサーチの特徴は、収集したデーターを word by word (言葉を1つずつ)までばらばらにして、もう一度まとめあげると言うものだ。Participant の人数は関係ない。さらに、集めたデーター以外、例えば research question があがった背景や、literature review (研究文献のレビュー)などの段階で見つかったことなども結果に含めていいのだ。私の研究の場合は、Participants がほとんど存在しない、と言うこと自体も問題だった。要するに読み手が納得するように書き上げれば、何でもあり、的な方法。ただし、これは私の見解だ。

良いリサーチ 

Quantitative research でも qualitative research でも、信用できる良いリサーチを見つけるには、やはりリサーチを勉強しなくてはならない。だが、それは医療者側の問題だ。リサーチを勉強している医療者は、情報収集力もあり、病状や治療についての説明がうまい。もちろんリサーチがすべてではないが、医療者がエビデンスに沿って医療を行っているかどうかを知るには、どれだけ患者の質問に答えられるか、というのも目安になるのではないか。

少し重たくなってしまったが、リサーチの方法だけで大学の教科になるぐらいだから、一般の方々に理解してもらえるのはなかなか難しい。医師の一人が学会の発表で、”私たちが医学を学んだのは、一般の方々に医学論文を解釈して説明してあげるためだ” と言っていた。同感だ。できる限り患者に良い説明ができるよう私も日々精進しなくては。