救急の醍醐味!トリアージ

救急の醍醐味!トリアージ

トリアージと言う言葉を聞かれた事はあるだろうか。英語でtriageと書くが、直訳では選別すると言う意味。医療の世界では、どの患者を先に診るのか優先順位をつけることである。

基本、トリアージはナースの仕事であり、患者を始めに診て緊急度を把握しなくてはいけないので、かなりの経験と知識が必要である。

戦場でのトリアージ

何年も前の話だが、ナースがトリアージを始める前のトレーニングでトリアージコースというのを受けたことがある。そのコースの始めに、トリアージとは何かを話しあった。パールハーバーと言うアメリカの映画を見られた事はあるだろうか?私は戦争映画は好きではないのでこの映画は観てはいないが、シーンの一部を見せられたことがある。まさにトリアージのシーンだ。

戦争で負傷した兵士たちが大人数運ばれてくる。若いナースが立ち尽くし、しばらくその様子を見ていた。そして、ポケットから口紅を出し、負傷した兵士たちの額に一文字ずつ書き、彼らが運ばれていく部屋を指示していくのだ。その中で、Fと言う文字が書かれていた。教官が、Fがどういう意味かわかる人?と質問し、思わず Fxxxed? と言って、笑われてしまった覚えがある。(本当はこんな教育の場でこんな失礼な言葉は使ってはいけない!!)答えはfatal、致死的な、と言う意味だ。私の答えも、まあ意味的には合っていた。

どんな医療施設でも、人員や資源、また使用できるスペースに限りはある。Triage することによって、可能な限り、助けられる人は助け、待てる人には待ってもらい、とても残念だが、助かる見込みの無いものには不必要な治療はしない、と言うことだ。

救急外来でのトリアージ

通常救急外来では triage code と言うのがある。私が勤務していたところは、コード1から5まであった。コード1は immediate response が必要な状況、つまり、患者はすぐに治療しなければならない状態で、コード2は10分以内に治療が必要、3は30分、4は1時間、5は2時間以内、と言う具合だ。患者は、救急外来の入り口から入ってくる場合と救急車で来る場合があるが、どうやって来院しようと平等に triage は行われる。通常の病院は戦場と違って、人命救助に全力を注ぐことができるので Code 1 がくると、かなりの人数の医療者が集まってくる。

基本、気道閉塞の危険、つまり息ができなくなる可能性がある時、心臓が停止している、もしくは、停止に近い状態、また多発外傷で重症の時などはCode 1である。心筋梗塞、脳梗塞、肩の脱臼などは Code 2になる。2週間前から咳が止まらない、などは Code 5になることが多い。2週間も調子が悪いままで大丈夫だったのなら、さらに2時間待っても大丈夫と予測できる。

しかし、上記はあくまでも目安である。私がトリアージを始めた十数年前は、患者を診て3秒でトリアージしろ、と習った。患者の動きや、呼吸、顔色などで緊急度を判断すると言うわけだ。肩を脱臼したとしても、激痛で苦しんでいたり、神経圧迫や血流阻害の症状があれば Code 2になるが、脱臼しなれている人で、それほど痛みを訴えているわけでもなければ、Code 3 でも4でもいいのだ。

しかし、最近のトリアージは時間がかかるようになってきた。プロトコールが多いのだ。これは、救急外来が忙しくて、トリアージした後は、患者が待合室で長時間待たされるのが常だからだ。何時間も待っている間に状態が悪化することもありうる。待ち時間が長くなりそうな場合は、悪化や治療の遅延をできるだけ防ぐために、トリアージの段階からいろいろとはじめてしまう。トリアージするのに、血圧、体温、心拍、呼吸などを計らないといけない。さらに、痛み止めを与える、検尿や採血までしたり、レントゲンをオーダーしたりもする。したがって、3秒ではとても無理だ。

面白いのは、この辺までは、トリアージナースが大体独自の判断でやることが多いことだ。基本的な痛み止めなどは standing order といって、アレルギーの有無などを確認後、ナースが患者に与えることができるのだ。Standing order はナースと医師が共同して 作ったプロトコールの事で、その場で医師の指示を仰がなくても遅れをとることなく、安全に投薬できるように作られている。

不謹慎と思われる方もいるかも知れないが、医療の世界で面白いのは、患者の訴えを聞き、そこから問題点を見つける、つまり、診断することだ。自分の知識と経験を使って、パズルを解くようなものだ。病院では医師がその役割をするのだが、トリアージだけは医師が関わってくる前にナースが関与できるから、ナースが診断名を予測するのにもってこいの機会だ。まあ、数分で本当に診断できるわけはないので、自分の中でのゲームみたいなものだろうか。そして、最終的に診断するのは医師なので、予測が違ってもそれは別に問題ない。

ここだけとれば、トリアージは面白いのだが、実際は、長い間待たされている患者に文句を言われたり、早く医師に診て欲しいのに、なかなか見てもらえなくって、心配したり、一度に5人トリアージしなくてはいけない状況に置かれたりと、ストレスに思うことの方が多い。ナイフを出してきた患者や待合室でいすを投げる人もいて、警察沙汰になったこともある。以前トリアージにおいていたメモ帳の横にメッセージが書いてあった。”Help me! I’m at triage” 助けて!今トリアージの係りなの。という意味だ。

ストレスに思うこともあれば、面白いと思うこともあるし、どきどきしたり、ヤバイ!と本気で思ったこともある。トリアージ無しでは救急は語れない。トリアージをしていると本当に話題に尽きない。また、それは今後いろいろと小出しして行こうと思う。まさに、トリアージは救急看護の醍醐味なのだ。