看護師は続ける価値のある職業なのか?

看護師は続ける価値のある職業なのか?

Health workforce (医療従事者)の中でもっとも人口が多いのがナースだ。それぞれにナースになる理由は異なる。看護学生の頃、なぜナースになりたいのかクラスメートで話した覚えがある。人を助けたい、という熱意を持っている人もいたし、資格のある仕事をしたいという現実的な人たちもいた。また、キャンディーキャンディーを見たからと言う子もいたし、医者と結婚できるからという妙な野心家もいた。ほとんどが女子だったが、男子も何人かいる学校だった。

海外では、ナースは人を助けられるし、ナースの資格だといろんな国で働けるから、と言うのが多いようだ。確かに、英語で看護ができると、働ける国の選択肢は多くなる。需要がどこにでもあるので、看護師の資格を使いワークビザがとりやすかったりもする。海外では職場を転々とするのがよくある。旅行をしながら仕事をする若者もよく見かける。また、勤務制度も融通がきくところが多く、小さな子供を持つ親などは、それぞれの家族の生活に合わせて仕事をしている。

遊園地並みに面白くてやめられない救急?!

救急のナースで、救急外来で働くのは、the safest adrenaline rush と言っている人がいた。Adrenaline rush と言うのは、予測もしない事が起こったり、緊急の事態の時などに、それに対応するためにアドレナリンという体内ホルモンが分泌され、どきどきしたり、手が震えたりする身体症状が起こることをいう。遊園地の絶叫する乗り物に乗ったり、失敗したら大怪我するか、下手をすれば死亡事故につながるようなスポーツをしたりする人は adrenaline rush が好きな人だろう。雪山の絶壁をスキーで降りてくる人とか、モーターバイクで空中宙返りをする人などもこの部類に入ると思う。確かに救急外来は予期せぬこと、ドキドキすること、ハラハラすることがよく起こる。しかし、セキュリティーはある程度充実しているし、他の職員もいるので、予期しない出来事にも安全に対応できるようにしてある。よほどの事が無い限り、こちらの身は安全だ。と言うわけで、怪我したくないけどドキドキしたい、と言う方には救急医療での勤務はお勧めだ。

自分の子供に看護師になることを勧めるかどうか

さて、私がナースだから、私は自分の子供にナースになるように勧めるかと言う質問をされることが度々ある。Yes か No のどちらかで答えろと言われると、私の答えはNoだ。一番の理由は、頭打ちをくらうから。

ナースにはキャリアラダー(場所によって言い方はまちまち)と言うものがあり、仕事の実績や経験によって昇格していくのだ。日本のように、同じ病院にいれば昇格していく年功序列みたいなものは無い。昇格するのには、レポートのようなものを書く必要があり、上に行けば行くほど、質問が多く、深くなる。量的には大学院の課題みたいな感じだろうか。しかし、昇格するごとに給料や福利厚生が少し良くなるので、大抵は自分の仕事外の時間をさいて、このレポートをやることになる。

しかし、ナースで昇格と言っても臨床現場で働く一番上の階級には結構すぐについてしまう。かく言う私もナースになって20年以上。正看護師としては、一番上の階級にいるので、これ以上昇格する事は無い。昇格がすべてでは無い。しかし、マネージメントや、医師はいくらでも目指せるところがあるのに、ナースはここで終わり。大学院に行って勉強しても、現場での扱いはほとんど変わらない。

何人かの医師に、そこまで勉強するんだったら医学部に言った方が早いでしょう。と言われたことがある。看護師はいくら勉強しても、看護師のままだし、しかも、ある程度昇格すれば、そこで終わりなのだ。子供たちに勧めるなら、やはり社会的地位の高い職業や、高収入の仕事を目指して欲しい。では、なぜ私はそんな仕事を続けるのか。それは、看護が好きだから、というより他には無い。あとは、父親に”戦争になっても仕事あるやろう”、と言われたから。

最近、私たちが日常的に患者に処方している薬が、メディアでたたかれると言うことがあった。メディアと言うのはいい加減なもので、ちゃんとして薬だと言うのに、”この薬を飲んだら、死んでしまうかもしれない”。と言うような報道を流した。おかげで、毎日、不安に思う人や薬を変えて欲しいと言う問い合わせが殺到した。私のせいでは無いのだが、”お前が勧めた薬で人が死んでるんだぞ”と、言われ続けると、やはり気分がめいってくるし、今までに築き上げた患者との関係にも問題が出てきそうな雰囲気だった。

ちょっとデスクを離れると、帰って来た頃には必ず、新規メッセージが入っているサインの赤ランプが点灯していて、いやな気分になっていた。先週のことだ。自分のデスクに戻ってくると、赤ランプが点灯していた。また文句のメッセージかと思って聞いていると、こんなメッセージだった。

”2年前にあなたにお会いしたときに、薬を勧めてもらいました。それからは、毎日欠かさず飲んでいます。メディアでは、悪い薬のように言われていますが、この薬のおかげで今自分は健康な生活を送れています。全く問題も無く、すごく良い薬を勧めていただきました。あなたとあそこにいたお医者様に本当に感謝しています。色々大変でしょうが、あなたへの感謝の気持ちをお伝えしようと思い電話しました。” 

特に気分が滅入ったひたっだので、本当に心が潤んだ。

自分の時間を使って勉強しても、もう昇格も出世も無い。でも、看護師は、病気や怪我をした人でも、その人にとってできる限り最良の人生を送れる手伝いができる。マネージメントや医師とはまた違った関わり方ができる。

普段は看護師はあまりお勧めしない私だが、今日は、看護師はいい仕事だ、と思った日だった。